2012-04-19
忘れられない出来事 NO 2905
昨号で書いた犯罪だが、福岡や静岡で被害が続いていたそうだが、悲しみにくれる方々が葬儀を行っている留守宅を狙うとは何と罰当たりの行動だろうか。大金や盗んだ貴金属類を持ち歩き、老後の蓄えが必要だったと犯行を認めたそうだ。
あちこちで新聞の訃報記事を目にしたことがあるが、多いところでは2ページぐらいに亘っていたこともあったし、故人名、喪主名、住所、式場などの個人情報の露出に違和感を覚えていたが、こんな犯罪が実際に起きたことは驚きである。
弊社の式場で葬儀を行われるお客様にも、「留守宅」の火の用心や戸締りについてアドバイスを行ってはいるが、そんな余裕が生まれないお悲しみの心境にあっては盲点とも言うべき問題で、今後に続いて気を付けたいテーマであろう。
ある大寺院で行われていた大規模な社葬本葬儀。40畳ほどの別室をご遺族の控え室としていたが、全国紙に黒枠告知をされたことから窃盗犯がターゲットにやって来ることも考えられ、ご遺族や親戚の方々に何度も「お気を付けください」とアドバイスをしていた。
窃盗犯が黒の略礼服姿でやって来たら会葬者に見えるし、ご多数の親戚の存在がある場合には互いが顔見知りでないことも少なくなく、そんな隙間を狙って来るのに対処しなければならない責務もあった。
葬儀が始まる20分前、控え室におられた喪主様と葬儀委員長をご案内して寺院控え室にご挨拶に参上。この際にご用意されていたお布施は問題なかったのだが、親戚の方々が式場に入って無人となった控え室でとんでもないことが起きていたのである。
開 式5分前、喪主様のご様子おかしい。外の受付横におられた会社の方を呼ばれて何か話をされている。異常な様子から心配になって伺ってみたら、セカンドバッ グがなくなったと仰るではないか。その中には現金の他にクレジットカードも入っていたそうで、カード会社に連絡をと命じられたそうだ。
そんな事情で定刻を5分過ぎて始まった葬儀だが、この出来事が気になって集中出来ず、きっとスピーカーから流れる私の声にいつもと違う周波数が伝わってしまったようで、20人ほどいた接待担当スタッフの一部が異変を感じていたことを後から知った。
恐れていたことが現実なった。事後対応をどのようにするべきかが頭の痛い問題で、責任の一端として自社側で被害の負担をするべきという考えも生まれていた。
それらが後日に参上した清算時に、想像もしなかった喪主様の温かいお言葉で一応の収束となった。
「あなたはプロとして何度も気を付けてくださいと言われていた。黒枠告知をされたら特に注意をとも言ってくれたのに、私の不注意で迷惑を掛けたと思っています。今回の事件は私の不注意から起きたこと。あなた側に落ち度はありません」
それは、喪主様のお人柄をそのまま物語るお言葉で、どれだけ救われたかは私にしか理解出来ないものだが、正直に言うと、心の奥に秘めていたもう一つの心配 があった。それは、弊社のスタッフ達が疑われていないだろうかと言うことだが、それらが一気に晴れたのは、その日から半年後のことだった。
深夜にある寿司屋さんで喪主様と偶然に出会った。そこで意外な事実を知るところとなった。犯人が逮捕され、犯行を克明に記録した手帳に社葬のことが記載され、被害に遭った金額もピタリと合致したというのだからびっくりだった。
刑の軽減を願う弁護士から一部の返済をと文書が届いたそうだが、故人の供養にもつながることなので出来るだけ穏便に対応したいと語っておられた喪主様。時折に出会う度にその出来事を思い出している。
かつて自宅葬が主流だった時代、一階に白幕を張って祭壇を設置していたのが懐かしいが、当時、スタッフに教えていたルールがあった。我々が仕事の責務で自由に動けるのは白幕で囲われた室内のみ。二階や奥の部屋には絶対に行くなということ。
ある葬儀を終えた夜、二階に置かれた喪服用のハンドバッグを知らないかという電話がご当家からあった。上記の内部ルールを説明し、誰も二階には上がってお りませんと返したが、次の日、同じ方から謝罪の電話。式場となった自宅へ向かうタクシーに置き忘れていたそうでホッとしたが、人を集め、人を走らせる「葬 儀」というものは、悲しみの影響からかもしれないが、記憶がすっと消えてしまうこともあるのでご注意を。