2013-06-11
体験から NO 3306
幼い頃、「夜に爪を切ったらダメ」と母から言われた記憶がある。確か「親の死に目に会えない」という意味を教えてくれたようだったが、昔の人達が伝えた言葉には「知恵」ということが多い。
そんな話をしたら、ある高齢者が「夜に爪を切ったら見難いので怪我をするという誡めだ」と教えてくれた。
この仕事に従事していると様々な迷信に出合うことになる。その最たるものが六曜の「友引」だろうが、講演で全国に出掛けた際に学ぶことになったその地独特の風習は本当に驚く世界で、宗教より土着した習俗の方が強いというケースも少なくなかった。
「葬儀は人を集め、人を走らせる」という言葉があるが、葬儀を担当させていただくと、全国からご親戚の方が参列される。そんな中で各地の習俗の異なりからややこしい揉め事に発展することもあるが、今でも忘れられない出来事は30年ほど前に起きた事件だった。
お通夜から「失礼します」と申し上げて帰社したのは午後10時過ぎだったが、それから30分も経たない内にご当家から電話があり、「親戚と揉めている。すぐに来て」と言われたのだから<何事か!?>と恐怖感を抱いて車で向かった。
揉め事は私が到着するまで休戦となっていたらしいが、その原因となったのは「法名」のことで、ご当家のご宗旨である浄土真宗の法名に「院号」はあるが「居士」が入っていないという問題だった。
浄土真宗では院号を頂戴しても「**院釈**」となるが、そこに「居士」が抜けていると喪主様がご親戚の方から追及されていたのだ。
何やら陪審的立場で中立することになったが、始めに確認したのはクレームを出された人物の生活圏のことだった。「広島か山口県から来られているのでは?」というものだったが、その方がその県境にご自宅があることを知り、「何でそんなことが分かるのか?」と訝られた。
その地では浄土真宗の法名であっても「居士」や「大姉」が入る習俗があるからで、大阪は本山のある京都に近いので厳しいのですとやんわり説明申し上げると納得をされ、「供養だから一杯飲め」と言われたが「飲酒運転になりますから」とお断りして日付が変わる頃に戻った。
こんなことは山ほどある問題。これなどは宗教より習俗の方が強いという典型的な例だろうが、習俗に関する書物を繙いてみると興味深いことがいっぱいあるので時折に紹介したい。